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2008/07/08

Seattle Guitar Circleを聴く

久しぶりにシアトル系ミュージック(カンタベリー系ミュージックに対抗して勝手に命名。グランジとかジャム・バンドなんかとも交錯するが微妙に違う立ち位置な音楽)の話である。その後もいろいろ聴いたり調べたりしているのだけど、体系的に紹介するにはまだまだ経験値が足らない気がしてなぁ。たまに思いついたように小出しにする。

さて、シアトル系ミュージックを追いかけていくといくつかのキーポイントがある。ひとつはいわゆるカンタベリー系アーティストの直接的ないし間接的な影響だ。これがオイラの云うシアトル系の最初。その延長線上にニューヨークというかKnitting Factory周辺のミュージシャンとの交流があった。で、もうひとつ大きかったと思われるのがギタークラフトの影響なんだ。

Seattle Circleという団体がある。公式サイト(最近、ドメインが変わったので要注意。旧サイトはなぜか引越屋サイトに……)によると1994年に結成された非営利音楽コミュニティで、ギタークラフトの分派ということになっているらしい。話が前後するが、一応簡単に解説しておくと、ギタークラフトってのはKing Crimsonの主要メンバーであるRobert Frippが1985年に創設したギター奏法の勉強会みたいなものだ。80年代におけるKing Crimsonが元々Disciplin(鍛錬)の名前でスタートしたのは有名な話で、FrippとAdrian Belewのギター2本によるアンサンブルが核となっていたわけなんだけど、それをみんなもやってみようよ~みたいな話でね。80年代後半ぐらいから、The League of Crafty Guitaristsの名義でFripp含む10人ぐらいのギタリストがアンサンブルとなって世界各国でライブを行っている。これが元々はギタークラフトのお披露目的な意味合いだったのだと思うのだけど、その初期の段階でシアトルや周辺地域など米国のミュージシャンが多数含まれているので、Seattle Circleというのもその頃に母体ができていたのだろう。なぜシアトルなのか事情はわからんのだけど。
The League of Crafty Guitaristsの名前が入ったCDを聴いたことない人に説明すると、そこにある音楽はKing Crimsonからヘビーさを抜き叙情性を残したような反復表現の多い短めの楽曲を、たくさんのギターでけっこうな早さで爪弾いていくインストということになる。長い説明だ。そこからThe Robert Fripp String QuintetとかCalifornia Guitar Trioといったバンドが派生的に生まれたのは比較的知られた話だろう。日本盤も出ていたからネ。そっちで知名度を上げたTrey Gunnもまさにシアトル系ミュージシャンに数えられる人物なのだが、一方でご当地、Seattle Circleの方でもいろいろ動きがあったり作品が出たりということになっていた。

Twilight

Seattle Guitar Circle 『Twilight』
品番はbm9901。bmとはBallistic Musicの略で自分たちで立ち上げたレーベルのようだ。メンバーはSteve BallCurt GoldenというThe League of Crafty Guitarists参加組に加え、Bob Williams、Jaxie Binder、Dean Jensen、そしてBill Rieflinという6人。そうシアトル系のキーパーソンのひとり、Rieflinがここに登場するのだよ。実は1999年の発表ということで、彼の初ソロ作『Birth of a Giant』と同時期に出ていた作品なんだね。Bill(Williamの表記も多数) Rieflinはインダストリアル・ミュージックの代表グループであるMinistryとその周辺(&変名)バンドでドラマーとしてすでに知名度のあるミュージシャンだったのだが、1995年に脱退。以降、同僚だったChris Connellyとの活動などでマルチ・ミュージシャンとして興味深い音楽活動を展開していくことに。その転機としてSeattle Circleへの参加が大きなエポックとなったことは間違いない。ちなみに、その後の活動を通じて知り合いになったPeter Buckの誘いでREMのサポート・ドラマーとなり現在もツアー中である(先月のライブの詳細なレポートとか読むと観たくなるなぁ)。REMとシアトルとの関係とかもグランジやらKurt Cobainやらといった切り口など含めいろいろあったりするのだけど、今回は閑話休題しとこうかと。
さて、本作の収録内容は11曲で約25分と1曲がかなり短い。各曲ごとのメンバー・クレジットはなくライナーノーツの表記は作曲者のみ。演奏から人物像を推し量ろうとしてもお手上げなのはこの手の音楽をご存知の方ならおわかりだろう。個性を主張するよりむしろ全体像としてのブラッシュアップに重点を置いた演奏なのでな。どうやら全曲に全員が参加しているわけでもないようだ。The League of Crafty Guitaristsとの比較で云うと、「鍛錬」という言葉を思い出させないところが大きな違い。同じ出自ならではの近い風合いがあることは当然ながら、Crimsonライクな曲はなく、つまり攻撃性みたいなものが廃されて、よりエモーショナルな雰囲気が強く感じられる。ギターの音色そのものも硬質に響くようなことはない。かといってCGTほどの能天気な開き直り感もなく、冒頭のそして唯一のRieflin作曲ナンバー「Invocation」をはじめ各曲からは哀感とか叙情みたいなものが強く醸し出されている。あれだAnthony Phillipsの多重録音作品のアメリカ版みたいなところがあるね。夏の暑い夜に聴くと涼やかな空気を運んでくれること請け合い。だって今がそうだから。

それにつけても文章が長くなった。結局、このRobert Frippの影響を音楽的に、そして人脈的に取り込んでいったことがシアトル系ミュージックをさらに独特なものへと変えていった部分が大きいみたいなのだ。だいぶ面白い音盤も聴けてきているので、ちょろちょろとシアトル系についてはまた書いていきたい。

ちなみに今回のネタを転がしていくと、Atomic Chamber EnsembleであるとかElectric Gauchosであるとか、さらに派生したようなバンドなんかもあったりするのだけど、キリがないのでまた機会があればな。

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