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2009/08/18

Around TFF 5 『Sheryl Crow』 Sheryl Crow

Sheryl Crowが一発屋に終わらなかったのは、偏に本人の魅力がその後も光っていたからである。これはまず大前提として敢えて書いておきたい。オイラが「All I Wanna Do」という曲を耳にして、慌ててCD買いに走った1995年を思い出せば、それはもうSheryl Crowという歌い手がスゴイし巧いということに驚愕したのであって、決してTuseday Night Music Clubというバンドに魅力を感じたわけではなかったんだ。

でもね……というTears For Fearsとまず関係なさそうなところから話はスタートする。

そんなわけで急いで入手した『Tuesday Night Music Club』という彼女の1stアルバムは、件の大ヒット曲「All I Wanna Do」だけでなく今やポップス・クラシックと読んでも良さそうな「Run, Baby, Run」「Leaving Las Vegas」「Strong Enough」といった楽曲も含め、実に聴き応えのあるアメリカン・ロックの名盤だったわけだ。1993年に発売された作品なのだが、気づかずスルーしていたことに訳もなく焦ったものだ。いや、当時はネット文化も発達しておらず、情報の入り方そのものが遅かったり少なかったり段違いだったわけなので、さもありなんという話なのだけどね。

そんでもってヲタ心理としてこのアルバムがつくられた経緯を調べていくと、実はSherylは元々Tuesday Night Music Club(以下、TNMC)というバンドの一員であって、作曲なんかはバンドのメンバーが中心になって成されていただとか、後から加入したのにひとり名が売れてしまったSherylと他メンバーの間に確執があるらしいとか、いろいろ見えてくるわけだよ。実際、オイラの購入した日本盤は、1994年ナッシュビルでのライブから5曲を収録したボーナス・ディスク付きだったのだが、この時の演奏メンバーにTNMCからはひとりも参加していない。発売翌年のライブなのにひとりもだ。そしてTNMCの中心人物のひとりが、プログレ・ファンの間で注目されていたKevin Gilbertという人物(しかもSherylの元カレ)だとわかったりして。不思議の国のKevinはけっこう昔からあったからなぁ。ま、Kevinの話はそっちに譲るとして、こっちはSherylの方を追いかけよう。

Sheryl Crow

Sheryl Crow』 Sheryl Crow
1996年作品。この2ndアルバムを制作するにあたって、1stの布陣を使えば磐石だと周囲がいろいろ騒いでいたに違いないだろう状況の中、Sherylはその真逆へと向かった。TNMCからは一部の作曲や演奏にメンバー名が残っているだけで、その色はほとんど払拭。参加ミュージシャンが曲ごとにけっこうバラバラだったりしているのはそのためだ。Bill Bottrellの後任も立てずセルフ・プロデュース。タイトルも自身の名前をそのまま付けた。てか、ジャケには名前さえない(日本盤にはあるけど)。強気だ。マジ強えぇぇぇ。そして、彼女を支える新たな才能の登場なども相まって、約700万枚というバカ売れの前作には及ばないまでも大ヒットと呼んで差し支えないチャート・アクションを残した。歌い方も、前作に顕著だった独特なけだるさも健在ながら、さらに力強さを感じさせるものに変わった。延長線上にはあっても焼き直しにはなっていない。ただ、ジャケの暗さとリンクするようにハッキリと1stよりアルバム全体に地味めな楽曲が並んでいるわけなのだが、これまた聴きこむと各楽曲の面白さが理解できるものになっていて、いわゆる「スルメ盤」なんだね。「Home」や「Redemption Day」あたりは何とも味わい深い佳作だし、歪んだギターがオルタナ風味な「The Book」など実はかなりオリジナリティに富んでいる。いや地味ではあるのだが。一方でシングル・カットされた「If It Makes You Happy」、日本ではCMでもお馴染み「Everyday Is a Winding Road」といった曲は基本スカッとアメリカン・ロックに聴こえて、聴きこむとニヤリとさせられるような曲構成を持っていたりしてこれまた興味深かったりするのだけどね。その2曲の共同作曲をはじめ、演奏面でも全面的にSherylをバックアップし、アルバム全体の仕上がり具合に大きく貢献しているのがJeff Trottという人物。はい、やっとTFF登場だ。

1993年のElemental Tour以降、Roland's TFFは3ギターによるツアー・バンドを組んでいたという事実は、アルバムしか追いかけていない人にはどうでもよくても、TFF史を編纂しようっていう人間には見逃せないところだろう(いや編纂しませんよオイラは)。このCurt脱退後最初のバンドのギタリストは、Roland自身、続いてもちろんAlan Griffiths、そして3人目にこの人、Jeff Trott(Jeffrey Trottの表記もある)という編成だったわけなのよ。で、このバンドのドラマーがBrian Macleod。そうそう、前回チラッと登場してた人。で、この人がTNMCのドラマーだったってわけだ。時系列がおわかりだろうか。

Elemental Tour Bandをおさらいしておくと、Roland Orzabal(vo, gr)、Alan Griffiths(gr, keys)、Jeff Trott(gr)、Gail Ann Dorsey(b)、Brian Macleod(dr)、Jebin Bruni(keys)の6人。まごうことなきギターを中心に据えたバンドでね。この面子でのサウンドに確信を得たRolandは、次作『Raoul And The Kings Of Spain』を、まんまこのメンバーで録音。というわけで最もギターの印象が強いTFF作品が誕生したという流れなのだよ。

トリプル・ギターといっても、Eaglesで例えれば「Hotel California」的な掛け合いというかバトルみたいなものをやろうとしていたわけではなく、風合いとしてはアコースティックなものをベースとした「New Kid In Town」的な音の厚みを出したかったのだろうなと『RATKOS』を聴くと感じさせられるわけでね。そこでのJeff Trottの役割は、適材適所なリード・ギタリスト。アバウトに云えばDon Felder的なね。ただ、テクニカルさや個性がそんなに求められていなかったりするものだから、Jeff Trottらしさって『RATKOS』からはそんなにわからないんだよね。単純にギターの音という点で『Sheryl Crow』 という作品との類似点は指摘できるのだけど、TFFの香りを嗅ぎつけるのは困難だろうなぁ。

そこで、次回はもうちょっと掘り下げて、このJeff TrottとBrian MacleodがTFF以前に組んでいたバンドを紹介予定。メジャー・アーティストからグッとマイナーな世界に行く。TFFからはぶっちゃけだいぶ遠くなるけどな。

ちなみにJeff Trottは、Sherylの次のアルバム『The Globe Sessions』以降、全作品にブレーンとして参加し続けている。Sherylは、ここ日本では鰻登りということもないけどそこそこ人気をキープして来ているし、出すアルバムすべて全米チャート上位にランクインしている。これもう作品のクオリティ故ということ以外ないわけでね。Jeff Trottってば名伯楽みたいな位置にたどり着いちゃっていたりするのだ。そして最新オリジナル・アルバム『Detours』では、Bill BottrellとBrian Macleodが久々に参加してタイトル通り原点回帰が図られた。ここ数年で結婚失敗、大病(乳がん)、養子縁組と人生の転機となる出来事を立て続けに経験して、わだかまりをなくしたというところなのだろうね。オイラも息子を病気で亡くしてからというもの、昔々に喧嘩したヤツとか、こだわるのが馬鹿らしく感じたもんだ。生きてさえいれば一緒に酒飲んだりメシ食ったりできるじゃないか。その尊さといったらさぁ。

※事実誤認とかあったようなので修正入れた。参考:Sheryl Crow Fan Site

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