« 映画『果てしなき渇き』なんてあり得ないだろ | トップページ | 久しぶりに写真集を買ったのは舞美さまのせい »

2010/04/20

『果てしなき渇き』に流れる音楽とジョン・ゾーンと須藤茉麻とPerfume

著者を知ったのはブログだった。当時「新人日記」と標榜していたそれは、ちょっと変わった角度からいろいろなものを切り取って意見を述べていくスタイルで、なかなかニヤリとさせてくれるものだった。読むようになったきっかけ忘れたが、はてなランキングあたりが入口だったような。

この深町サンの書いたデビュー作で「このミス」大賞を獲った『果てしなき渇き』ってのが、埼玉県を舞台にした作品だと聞いて、「これはそのうち読まねばなるまいなぁ」と長いこと思っていた。たまたま違う用事で入った書店に見つけて、フラッと購入。深夜に読み始め、一気に読み進んだら翌朝になっていた。面白かったのだよ。そしていまだに思い出したように何度となく読み返しているのだ本当に。

果てしなき渇きタイトルに反してドシャ降りの夜という非常にウェットな情景からスタートする本作は、殺人、ドラッグ、援助交際、鬼畜の限りドンと来い、公序良俗なにそれ?な超日常が、あなたの知らないところで、しかも近いところで起こっているんじゃないのさということを圧倒的な質量でもって見せつけてくれる。やっぱりタイトル通り、どこまでも喉の渇く感じを体感させられた。しかも自宅の近所の地名とかが登場するので、もう何と云うか情景がモロに頭の中で浮かんじゃうわけ。リアルー。大筋は元警官が失踪した娘を探していく中で、見ないで生きてきてしまった世界を目の当たりにするといった話。正直、「何でそうなる?」というツッコミどころは多々あるのだけど、「そういうこともあるかもしれない」に落とし込める範疇ではあり、むしろ常識とか社会のルールみたいなものに縛られない考え方をなかなかできない身としては、その部分こそがワクワクさせられたりしているんだろうなぁとも。

John Zornというサックス吹きのつくる音楽は幅が広いわけなんだけど、その一端であるNaked CityとかPainkillerのヒリヒリするような暴力的音楽に近い出自なんだろうなぁと思ったのが4月1日ネタに結びついた次第。あまりにあんまりなのでつい笑ってしまうみたいな読後感も、『拷問天国』なんかを初めて聴いた時の感覚に近かったわなぁ。どちらも、構築度が高く、実のところ緻密に計算されていたりもするのに、そんなこと触れた瞬間には微塵も感じさせない爆発力がある。

ちなみに作中では音楽的な描写がほとんど出てこない。出てくるものも、わざとやってる可能性もあるんだけど、ちょっと古いなぁという印象の方が強かった。具体的なのはEaglesの「Hotel California」の有名な話(スピリッツありませんねんってやつ)ぐらいだし、ヤンキーたちが聴いている音楽も何だかヒップホップとか何だかクラブ・ミュージックみたいなアバウトさで薄っぺらい。でも、その輪郭のはっきりしない、場の雰囲気だけを感じさせる見せ方はアリだとも思った。いま実はヌードドラゴンズ(NUDEDRAGONS = SOUNDGARDENだね)の海賊音源を聴きつつこれ書いているのだけど、こういう典型的なグランジの音とか歌詞世界ともリンクするなぁなんて、勝手に頭の中でBGMを入れればいい。

あんまりネタばれしちゃうとアレなんだけど、作中には加奈子という不在のヒロインが登場する。作品は、彼女の周囲の人間によって彼女の実像が語られていく現在の話と、彼女の過去をじっくり見つめる少年の目線から描く話が交互に登場するスタイルになっていて、あくまで第三者の視点からしか輪郭が見えてこない非常に偶像的な存在になっているのね。云っちゃえばアイドルですよアイドル。で、彼女の中にある計り知れない絶望とか孤独、それによって形成された表の顔と裏の顔みたいなものをウヒャーとか云いながら読み進めるのも、本作の魅力的な要素になっている。ま、しかしあれだ、ある意味、アイドルが処女じゃなきゃダメとか男と付き合ってちゃダメとか、そんなのご都合主義的かつ勝手な解釈でしかないよねということをバーンと叩きつけられるようなものなので、その手の純粋な心を持ったヲタには全力でオススメしない。

で、須藤茉麻なんだが、加奈子というキャラクターの持つ、明るさも暗さも兼ね備えて、印象的でありながらミステリアスなところもある女のコということでセレクトしたわけだ。真剣に考えた結果でね。須藤君にはどんどん活躍してもらいたいのだよ。実は替えの効かないタイプの人だと思うからさ。

深町サンはPerfumeの熱狂的ファンとしても知る人ぞ知る。ファンとかオタクさんが増えたので彩音で採り上げることはまぁあんまりない(うちは他でやっていないネタをなるべくやるようにしているのでな)わけなんだが、新曲はけっこうカワイイと思うよ。

次回はハロプロー。
その次に先月1回も更新できなかったことに焦っているATFFかな。このままだと今月も危ない……。

|

« 映画『果てしなき渇き』なんてあり得ないだろ | トップページ | 久しぶりに写真集を買ったのは舞美さまのせい »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/28861/48075562

この記事へのトラックバック一覧です: 『果てしなき渇き』に流れる音楽とジョン・ゾーンと須藤茉麻とPerfume:

« 映画『果てしなき渇き』なんてあり得ないだろ | トップページ | 久しぶりに写真集を買ったのは舞美さまのせい »