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2013/07/21

「見かけと違って重い」というCurt Smithの新譜

2012年ツアーの千秋楽でもあった昨夏のサマソニ東京公演以降、音楽的な動きをまー見せないよねーという通常運転に戻った相方のRO氏を横目に、Curt Smithもいつも通りに精力的な創作活動をしていたようで、その成果が発表された。ま、Tears For Fearsの新譜っつーのも水面下ではいろいろあるみたいだけどな。

Deceptively HeavyDeceptively Heavy』 Curt Smith
繊細で爽やかな歌声、奥行きと広がりのある音響空間。これこそがCurt Smith & Charlton Pettusの作り出す音楽だということがよくわかる新たなスタンダードが誕生した。基本的には今までカート君が発表してきたソロ作の延長線上にある音なのだけど、全体を支配するトータル・イメージとは裏腹に楽曲はバラエティ感を増し、新境地と呼べるような曲も聴ける。まだまだ前進し続けるんだなー。ここにRoland Orzabalが加わったらTFFになるのかといえばそうはならない。てか、ローランドの入る余地がない。明らかにTFFとは異なる世界を目指した作品になっている。向いてる方向はほとんど一緒なのにな。
「見かけと違って重い」というアイロニカルなタイトルを冠した本作は、ドラムで一部参加しているAaron Sterlingのブログによれば2011年夏に録音参加しているようなので、前作『Halfway, Pleased』同様、けっこう長い期間かけてまとめられたと見ていいだろう。練り上げられた楽曲が揃っているのはそれ故ではなかろうか。結果的に先行シングルみたいな存在となった「All Is Love」が収録されたことで、もしかしたら「The Social Media Project」というコラボ企画は無かったことにする気なのかもしれない。それはそれで残念ではあるけど、女性ゲストをフィーチャーした曲の多い本作に収まって、ストンと腑に落ちた感もある。TFF来日公演にも帯同したCarina Roundがバックボーカルで参加する「Beautiful Failure」、Claire Acey(香里奈ちがうカリナのツアーにも参加している女性ボーカリスト)がバックに参加した「My Point Being」、じっくりと歌い上げる「Well Enough」、ダークな立ち上がりから一転してサビで爽やかになる「Heavens Sake」、アコースティックな質感が魅力の「Some Secrets」 といったあたりがアルバムの空気を決定づけている。一言で片付けるならAORなのだけど、ブリティッシュ・ロックの下敷きがあってこその音というか何というか。で、実はそういう感じが一番強いのが「Suffer The Silence」だ。ここまで来ると、もうブリット・ポップ meets AORくらい云っちゃってもいい気がする。そして意外にも初期TFFにも通じる音になっている。ここまではカート君の今までの文脈を汲みつつ深化したような楽曲たちで、残りの4曲がその面白さに唸らされたもの。前半パートをCarina Roundが、後半パート(サビ付近)をカート君が歌う「Hold It Together」は、激しい感情とそれを冷ます言葉、楽曲の緩急の対比が演劇的で楽しい。逆にMichael Wainwrightの『The Circus Is Coming To Town』 にも参加していたHolly Palmerがサビ付近を歌う「Porn Star」も劇的でユニークな一曲だ。散文的な歌詞が興味深い「Wild」と、ジャケットもマネキンになってるので実は本作のリードトラックかもしれない「Mannequin」は、どちらも自分のお気に入りだ。特に後者は叙情的な初期のGenesisとポップな後期のGenesisを合体させてカート風に料理したような比類なき作品と受け止めた。とにかく聴きどころたっぷりなアルバム。こういう作品に出会うとね、ライブで聴いてみたくなるんだよね。TFFの単独再来日ももちろん期待しているけど、カート君のソロでのライブもぜひ日本でやってもらえないものだろうか……。

ちなみに全曲試聴サイトはこちら。もちろん公式なものだ。

それにつけても今年は『The Hurting』発売から30周年ということでホームページも新しくなり、何かやってくれるんじゃないかという期待感を抱かせてくれたりはしているのだけど、気がつけばもう残り半年というところで、TFFらしいグダグダな展開になりゃしないかと不安も多々。

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