カテゴリー「ATFF」の18件の記事

2013/08/16

Around TFF 18 『説到愛』 蔡健雅 (Tanya)

Around TFF(ATFF)はTears For Fearsの周辺ミュージシャンを紹介しつつ、TFFの音楽性を読み解くヒントが見つかればと思いつつ書いているところがあるわけなんだけど、今回紹介する蔡健雅(ターニャ・チュア/タニア・チュアとも)のこの作品なんかは実のところ「TFFの今」を探るヒントにあふれているような気がするのだ。

説到愛説到愛』 蔡健雅 (Tanya)
2011年発表。台湾を中心に活躍するシンガポール出身の実力派女性SSW、ターニャ・チュアのアルバムで、サビなどを除けば全曲北京語で歌われている。サブタイトル的に「Sing It Out of Love」と入っているのでタイトルはそんな意味なのだろう。セルフ・プロデュース作ではあるが、TFF組のCharlton PettusDoug Petty、Jamie Wollam(と、ジャズ畑のベーシストであるBrian Allen)が全面参加&アレンジを担っており、アルバム全体のイメージは彼らに委ねられたといっていいつくりになっている。TFFは前年に台北公演を行っているので、その辺りで打ち合わせ&レコーディングの流れになったのだろうと想像できる。誰がセッティングしたのか絶妙なマッチングで、TFF現メン推しなら必聴の作品に仕上がっている。核にあるのはかなりかなりソフトになったStevie Nicksっぽいターニャの歌声なのだが、バックは最新TFFのあの音。タイトでムーディーで緻密に織られたカーペットのような世界があるのだ。特に表題曲(台湾ドラマ「姉妹」の主題歌)は云っちゃえば「大きな古時計」並にシンプルな曲なんだけど、ピアノをベースとしたアレンジで「これしかないだろ?」と思わせられるほどの見事な演奏になっている。とにかく北京語なもんで、歌詞カードの漢字とにらめっこしながら意味を追うしかないのだけど、ほとんどがラブ・ソングのようだ。しかし、単純な愛の歌ばかりではないことが曲調からもうかがい知れる。アコースティックなアレンジの演奏もたまに顔を出す。その中でもターニャ自身のギターをフィーチャーした4曲目「舊行李」が白眉だ。TFFっぽさからは一番遠いアレンジではあるんだけどね。それにつけても才能のぶつかり合いがうまいこと結実すると、こうも素敵なアルバムが出来上がるものかと舌を巻く。TFFのふたりが制作中なはずのニュー・アルバムにも彼らは名を連ねるだろう。本作を聴けば、わくわくしながらその音を想像することができるにちがいない。


ちょっとTFFっぽさがあるような気もする本作3曲目の「可愛」。

なお、ターニャは本作と同時に『Just Say So』という全曲英語&収録曲すべて別なアルバムも発売しているのだけど、そちらは何故か全然ちがうメンバーで録音されているようだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011/09/25

Around TFF 17 『The Circus Is Coming To Town』 Michael Wainwright

素晴らしい新作アルバムをつくってくれちゃったのでMichael WainwrightATFF第3回以来、2回目の登場だ。彗星のごとく現れてTFFの名物バックボーカルとして一躍人気者になってしまった彼は、現在もTFFツアーに同行中。で、たぶんこの新作CDを会場で手売りしていたりするんだろうな。

The Circus Is Coming To TownThe Circus Is Coming To Town
Michael Wainwright

リンク先はアマゾンMP3。CD(ってかCD-R)はウェインライト君のホームページしか買えない。試聴はコチラから全曲フルで聴けるので、音だけでも確認してみたいと興味を持ったらどうぞ。なお、CDは前回のように変形ジャケではなく普通の紙ジャケで届いた。しかもオイラの名前&サイン入りでな……。前作ではカート君の方が参加していたんだが、今回はローランド君の方を引っ張り出しちゃったよ、この人。ゴイスー。で、その辺のクレジットを確認したかったりというのもあり、配信ではなくCDで購入したんだけど、ライナーに作曲クレジットはなかった。だけど、参加ミュージシャンに関しては記載があった。演奏者には、Charlton PettusDoug PettyのTFF組、ドラムにJohnny Society第14回参照)のBrian Geltner、ベースにBoyz II MenからJohn Sykesまでジャンルを超えて数多のアルバムに参加しているセッション・ミュージシャンのReggie Hamilton、ホーン・セクションにローカル・ミュージシャンながらHarry Allenなどにも一目置かれるDave Wilsonといった顔ぶれが並ぶ。注目のゲスト・ボーカルには、「123456789」でデュエット相手にHolly Palmer。この人は何気にBill Frisellなんかが参加した『Holly Palmer』でデビューした知る人ぞ知るベテラン女性SSWだ。また、1曲目のパワーポップな表題曲にはRobert Patrickが「Angry Caller(怒り叫ぶ人)」としてクレジットされている。もちろんT-1000の人。どういうつながりなのかわからんけど。ちなみにFilterのフロントマン、Richard Patrickってのがこの人の弟なんだな。知らんカッタ。そしてそして、お待ちかねのRoland Orzabalは2曲目のゲスト・ボーカルということになっておる。
この「Heart-Shaped Man」(公式サイトでは期間限定フリーダウンロード中。要メアド登録)という曲、1曲ごとの紹介ページの記載では「written by Roland Orzabal」となっており、どうやらローランドの単独作曲ナンバー。「All You Need Is Love」的なミドル・テンポ・サイケデリック・ポップ・ソングといった風情。TFFでも「The Seeds of Love Tour」で「All You Need Is Love」やってたので、まぁ、うん、そうかといったところではあるが、あんまりTFFらしさは感じられないかな。アレンジを変えたら雰囲気がかなり変わりそうでもあるけど。最新ツアーでTFFヴァージョンやってくれないかなぁ。ローランド君のボーカルは低音コーラスでお遊び風。云われなきゃわからんレベル。でもシンプルで、楽しさと切なさが同居した味のある作品だ。
高音ボーカルと内省的な雰囲気が印象的だった前作の延長線上にはあるが、より幅広い音域をカバーした歌唱、いろいろな音楽を消化して、より雑多になった音楽性など、さらにメジャー・フィールドでも戦えそうなアルバムだなぁというのが全体の感想。何しろプロデューサーはCharlton Pettusなわけだし、再結成後のTFFとかぶるメンバーがいるんだから近い音にはなっているし、各曲からはTFFの影響が感じられるのだけど、歌はもうMichael節全開で独自の世界をしっかりと構築している。でも、「Blue」あたりはだいぶ最近のTFFっぽさが垣間見られてステキ。前作同様、TFFファンなら楽しめる部分をかなり含んでいるので、再結成後の音が好きな方には必聴と云える。

ちなみにしょーがないから作曲クレジットまとめといたわ。
1,4,7 written by Charlton Pettus
2 written by Roland Orzabal
3,6,10 written by Michael Wainwright & Charlton Pettus
5,8,9 written by Michael Wainwright

どういうフォーマットを指しているのかわからないのだけど、「Heart-Shaped Man」はシングル扱いになっており、Kristen MillerによるアニメをフィーチャーしたPVがつくられている。そのまんまな「ハート型男」がサイケだぜ。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2011/05/18

Around TFF 16 『Was It The Future』 Seiko & 『Shall We Dance?』 Baila

Amy Keysは再結成後のTFFのライブでゲスト参加した黒人女性ボーカリストなわけだが、Curt Smithのソロ『Halfway, Pleased』のライナーでTFFメンバーのようにクレジットされていた割に、その後、参加できなくなってしまったようで、後釜のMichael Wainwright君の方が大きく注目を集めてしまった感がある。が、実に味のあるボーカルを聴かせてくれる歌姫であり、もっと注目されていい存在だと思うので、一度紹介済みながらフォローしきれなかった作品を紹介したいのである。

関連エントリ:Tears For FearsのUSツアーに参加したAmy Keysとは?

1983年のミス・アメリカ候補のひとりだったこともあるAmy Keysは、ブロードウェイ・ミュージカル「Dreamgirls」のオーディションで知り合ったJulia McGirtのグループに誘われてデビュー。Epicに見出されて、1989年発表の『Lover's Intuition』(Amazon扱いあった)でソロ・デビューを果たした。その後は、バック・ボーカル担当としてLeonard CohenK.D. LangRicky Lawsonといったミュージシャンのツアー・メンバーをやったり、Phil Collinsの『Dance Into The Light』(ちなみに最新作『Going Back』にも参加)をはじめ数多くのミュージシャンの作品に参加するなど、セッション仕事がメインになっていく。

Was It The FutureWas It The Future』 Seiko
そんなセッションの中でも、日本人ならはずせないのが、松田聖子の米盤にバッキング・ボーカルで全面参加しているところだろう。1996年に発表された、全米デビューから2作目という位置づけの作品。前作ほど酷評されていないようだが、やはり英語では流石に「らしさ」が出せなかったか、「日本ポップス界の実力派アイドル・松田聖子」のアルバムとしては失敗作かもしれない。しかし、「新人R&B女性シンガー・Seiko」の作品としてはけっこう楽しめる。Amyもその実力を遺憾なく発揮しており、「Your Precious Love」「A Little More Time」ではほとんどデュエット状態でエモーショナルなボーカルを聞かせてくれる。粘っこさがありながらも伸びやかで爽やかささえあわせ持つ歌声は、主役以上にR&B向きで素晴らしい歌声と云わざるをえない。

Shall We DanceShall We Dance?』 Baila
ソロ・デビューから約10年後に発表された、Bailaというプロジェクト・バンドの作品。Terry Wollmanというマルチ・ミュージシャン主導の企画なのだが、Amyはメイン・ボーカルとして全曲で歌いまくっている。雑駁に云うと全体の音はAOR寄りのフュージョン。リズム隊が跳ねまくってなかなかダンサブルな仕上がり。「Fascination」ではアシッド・ハウスのような風合いも見せる。ちょっとShamenみたい。一方で「No Pain, No Gain」ではハードロック風のアプローチを見せたりとバラエティ感もあるが、Samuel Turcotte(マルチ・アーティストでボディビルダーという変わった人らしい。インタビュー記事参照)というコンセプターが噛んでいるということもあってか、散漫さや寄せ集めた感じは一切ない。最後はあの「Stayin' Alive」ということで、レトロに盛り上がっておしまい。いろいろ楽しい1枚だ。

Amyの最近の仕事で大きなトピックとなるのは、Dave Stewart (Eurythmics)のツアー参加ということになるだろう。Annie Lennoxの代わりとしてEurythmicsナンバーもバッチリ歌いこなしていたようだ。活動のサイクルが合えば、またTFFで歌うこともあるかもしれないし、それを期待したくもある。

次回、ATFFはダグさんの予定だす。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011/02/14

Around TFF 15 『The Butterfly』 De:laQ

De:laQ」とか「DelaQ」という表記を見てTears For Fearsとの関係を想像できる人がいるとしたら、相当コアなファンといっていいんじゃないだろうか。「デラキュー」。もちろん「ベリキュー」とは関係ない。

もったいぶってもしょうがないので、正解なんだが、それはRoland Orzabalの本名に含まれているのだ。Roland Jaime Orzabal de la Quintana。ホラ、あった! ということで、今回はみんなのローランド兄ちゃんを心から「兄ちゃん」と呼べる唯一の人物、Julian Orzabal de la Quintana君のバンドの紹介なのである。

Elemental』や『Everybody Loves A Happy Ending』にバック・ボーカルで参加しているJulian Orzabal。TFFのローディやったり、Rolandのソロ・アルバムに伴うホームページ(既に閉鎖)制作に関与したり、またファンクラブ運営などにも携わってきたようだが、音楽活動は「やっているらしい」という噂レベルでどんな人物なのかいまひとつわからなかった。TFF以外の作品へのゲスト参加も知られていない。その彼が満を持して組んだバンドがDe:laQということになる。バンドといってもその始まりがFacebookで知り合ったEric Senetというフランス人マルチミュージシャン(ただしぶっちゃけ無名)とのネット上でのやり取りだったことは公式ホームページに詳しく載っている。Julianが書いた歌詞にEricが曲を付けたデモ音源で盛り上がり、Julianが渡仏してボーカル録りへ。ついに昨年、CD発売にまで至った。その後はライブも行ったようでライブDVDも出ている(オイラがCD買った時にはこのDVDは出ておらず、残念ながら未入手)。

The ButterflyThe Butterfly』 De:laQ
オイラは彼らのサイトからプレスCDを購入したが、アマゾンMP3でも買える。インディーズ発信でもクオリティは楽曲も演奏も録音もしっかりしているので、その辺はご心配なく。アルバムに収録されているのは、雑駁に云えばどれも屈託のないシンプルなロック。英仏混合の割にはところどころアメリカ南部の香りがするんだが。ギターのアプローチの仕方所以なんだろうね。15曲収録で、歌詞はすべてJulian作。作曲は8曲がEric、5曲がEricとJulianの共作、2曲がJulianとAnthony Gunner(Tony Gunner)の共作となっている。おそらくはGunner共作の2曲がJulianのストック曲と思われ、楽曲としての立ち上がり方が違った毛色になっていて面白い。TFF色を感じ取るならこの辺ぐらいかな。個人的に好きなのはメロウな「Feeling Like A Star」と「God's Own Hand」。どちらもキーボードが実に良い感じで、Ericさんはギターよりもキーボードに比重を置いた方が良いのではないかと思わなくもない。
ライナーには、残念ながらRolandお兄ちゃんのクレジットはナシ。兄の名前で売らない気概を見せたということだろうか。ライブでは「Pale Shelter」のカバーとかやっているようだが……。ま、ご多分に漏れず音楽はTFFっぽさ皆無に等しいんでな。いや声は伸びの良さとか独特な粘り気とか兄に似たところも無きにしも非ずではあるんだけど。一発でそれとわかるほどには似ておらん。しかしまぁ、TFFファン的にはどうやら作っていそうな次作にRolandが参加するのか否かの一点に期待している部分を否定できないわけで……。弟ならではの受難は続いてしまうのかもしれない。
なお、De:laQの曲はホームページにて自動で流れているほか、彼らのMySpaceYouTubeでも聴くことができる。

ちなみにリズム隊のLionel BoisseletとPierre Leveilleは、Ericと共にフランスでDelilah Juneというバンドをやっている仲間らしく、ふたりとも本業は教師であるとのこと。結果的にDe:laQはDelilah Juneのエクストラ・バージョンみたいな立場なんだが、YouTubeで聴ける音源からすると音楽性はだいぶ違うようだね。こっちはこっちで格好イイ音だなぁ。本当に世界は広い。

すっげー、ちなみになんだけど、Roland兄ちゃん……ではなくRolandのリアルお兄ちゃんのMySpaceはコチラ。彼ら、三兄弟なんだ。
もうホント、情報が全然載っていないので、「顔似てますか?」レベルの話しかできないんだがね(じゅりさんが喜びそうだ)。

次回ATFFは、またまたTFFからちょっと遠いんだが、Amy Keys関連で。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/11/18

Around TFF 14 『Life Behind the 21st Century Wall』 Johnny Society

はい、お久しぶり。読み返していただくと話が早いのだが、とりあえず前回の続きみたいな感じでスタートせざるをえない。放っておいたオイラが悪い……。

Hunk崩壊後、ギタリストで中心人物だったKenny SiegalとドラマーのBrian Geltnerは、新たなバンドの結成を画策していた。元々ふたりは、ニッティングファクトリー周辺でプログレ(!)・ミュージシャンとして話題を呼んでいたChris Raelが始めたプロジェクト・バンド、The Handに1995年からHunkと並行して参加しており、たぶんHunkがなくなってもこっちがあるわいという状態だったんだね。しかし、Chris Raelからこれまた彼がもうひとつ並行してやっていたバンド、Church of Bettyの活動に専念するという話が出て腹を括らざるをえなくなった。それならばと、ここにJohnny Society誕生と相成ったわけだ。

それにつけても『Hunk』発表の翌年にあたる1997年に、The Handで『Mule Me』『Sad Circus Clowns』というアルバム2枚、そしてJohnny Societyの1stアルバム『It Don't Matter』を出しており、いかに音楽創作活動に充実した時期だったかが理解できようというものだ。 Kennyはギターだけでなくボーカルも担当。引き続きゲストを迎えつつ翌年にも2ndアルバム『Wood』を発表した。
この後、パーマネントなベース&バック・ボーカル担当としてBlueberryの名前でソロ活動もしているマルチミュージシャンのGwen Snyderという女の子を迎え入れた。ま、今ではKennyの奥さんでもあるんだけどね。このトリオをベースとして録音された最初の作品『Clairvoyance』を2000年に発表。この頃までにインディーズではけっこう知られた存在といった立ち位置にいたようだが、『Lost Songs of Lennon & McCartney』というBeatlesのトリビュートCDに参加し、Cheap TrickのRobin ZanderやThe B-52sのKate Piersonと共演したことで、さらに知名度を上げたんじゃないかと思うね。

Life Behind the 21st Century WallLife Behind the 21st Century Wall
Johnny Society

彼らは既に5枚のアルバムを発表しているのだけど、最新作ではなくて4thアルバムにあたる本作を採り上げることにしたのは、2003年発表ということで 『Everybody Loves A Happy Ending』発売のちょい前に出ていたからだ。あとジャケットでメンバーがわかりやすい感じだったのが本作だけだったというのもあるけど。右からBrian Geltner、Kenny Siegal、ひとり飛んでGwen Snyder。飛んだグラサンはBrion SnyderでたぶんGwen Snyderの弟。クラリネットとかピアノとかを演奏しており、ヘルプで入った感じだろう。Johnny Societyの音楽性を簡単に表現すると、オルタナ系だけどあんまり暗さのないアメリカン・ロックということになろうか。ただ、歌詞の中にはちょろちょろアイロニカルな部分が見え隠れしている。アルバム・タイトルからして『21世紀の壁に隠れた人生』と意味深だ(11曲目の歌詞から取っている)。1曲目の「Charity」なんてスゴイんだぜ。投げやりに「チャリティ~、あんたの金をくれ~」とほとんどそれだけを歌い続ける。ラブソングも多いんだけど、どこか自虐的な感じだったり。ぶっきら棒な歌い方と演奏が主体。しかし、その一方で繊細さも見え隠れしているわけだ。で、TFFっぽさはどうなのかというと、けっこう感じられる。ただ、まぁ、TFFというより『ELAHE』っぽさと云った方が近いかもしれない。とりわけラスト2曲が醸し出す雰囲気は、ビートルズ的な楽曲をアメリカン・ロックの空気でブラッシュアップしたような煌びやかさと広がりがあってなかなかステキだ。

さて、『ELAHE』でJohnny Societyメンバーが参加しているのは「Size Of Sorrow」と「Who Killed Tangerine?」の2曲。「Size Of Sorrow」はローランドの曲なのにカートのボーカルという、再結成を象徴するような楽曲。ドラムにGeltner、ゲスト・ギターにSiegalを迎えており、このパートのレコーディングはTom Schickが行ったとライナーに書いてある。Tom Schickは『Life Behind the 21st Century Wall』のプロデューサーだ。どうも同じ時に録音されたものと見て良さそうだ。一方で、Johnny Societyっぽさはあまり感じられない。ま、アレンジが静かに進行するものになっているせいかもしれないけど。アルバムでも次の曲になっている「Who Killed Tangerine?」ではSiegalとSnyderがバック・ボーカルで参加している。が、その他大勢的なコーラスで個性を発見できるはずもなく。でも、こっちはTFFが録ってるスタジオに彼らがやって来たんだろうからして、交友みたいなものはあったのかもという推測は立つ。

彼らをTFFに紹介したに違いないCharlton Pettus君は、付かず離れずな感じで常にちょっとだけバンドをお手伝いしているような状態になっている。『Wood』では1曲のみ作曲で共作。『Clairvoyance』では2曲を共作。そして本作では「Love」という曲で共作している。ちなみにだが、この「Love」はバックボーカルに彩音でも何度か紹介しているAdam Cohenを迎えている。何かそうかそういうとこにつながっていたりもするのね、みたいな。最新作は2005年の『Coming to Get You』なんだが未聴ゆえ関わりがあったか不明。

なお、Elyas Khanという髭のオッサン率いるNervous CabaretというバンドにはJohnny Societyのメンバーがガッツリと参加しているので深掘りしたくなったら同名アルバムなど出ているので追いかけると良いのではないかと。

あとKennyは昨年、初のソロ・アルバム『Eleccentricity』を発表している。日本での扱いはなかったのだが、先日のアマゾンMP3取り扱い開始でめでたく買って聴けるようになった。ビバ、ロングテール商品! 未聴だけど、これは聴くのが楽しみだなぁ。

次回ATFFは、RO氏の弟バンドで一席。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/02/15

Around TFF 13 『Hunk』 Hunk

予定ではあと5回ほど、TFFの最新スタジオ・アルバムといっても気がつけばもう6年前の作品になってしまうんだが 『Everybody Loves A Happy Ending』の関連作&ミュージシャンを紹介していく。それからRoland's TFFに行って、『The Seeds of Love』関連へと遡っていこう。その辺を先にやってくれって? そっちの方が需要があるって? いや、こっちも面白いんだってば。

今回は『ELAHE』収録の数曲に参加しているKenny SiegalBrian Geltnerが在籍していたバンド、Hunkでござる。Charlton Pettusもお手伝いしているあるよ。

Hunk

Hunk』 Hunk
1996年のデビュー・アルバム。かつ現状唯一の作品である。前回と同じような始まり方だが気にするな。「Hunk」で画像検索すると体育会系ムキムキマッチョな外国人お兄さんがいっぱい出てきて腹筋を始めたくなること請け合いなのだが、ジャケ絵でも冴えないオジサンが鏡を見たら中からそんなお兄さんがニッコリみたいになっちょるね。だいたいそんな意味のバンド名。音も実に男くさいんだけど、別に変態じゃなくてストレートなガレージロックだ。Nirvanaの『Nevermind』が1991年で、その5年後なんだから同じgeffinレーベルが狙っていたのは2匹目のドジョウだったのかもしれない。プロデューサーはSonic Youthとの仕事で知られるオルタナ系が得意分野なDon Fleming(プログレ通の貴兄にはB.A.L.L.時代のKramerの盟友と云った方がよいか)だし。力入ってた。でも、残念ながら派手にコケた。そんなわけでamazonでもマーケットプレイス1円だったりして……。しかし、しかしだよ。世間の評価なんか気にしないで耳を傾ければ、その良質な楽曲たちに唸らされること間違いナシなのだ。
ギター・バンドだったら「みんなグランジ」みたいな乱暴な括り方って当時あったし、実際、そこら辺をわざと狙ってやっていた人たちもいた。Rushの『Counterparts』というアルバムなんか「グランジ? それ美味しいの?」と本人たちは云いそうだが、明らかにあの時代の音づくりを敢えてやっている。その上、あくまでもRushで最高だったんだから大したもんだ。でもってHunkというのもたぶん根っこにあるのはグランジとかオルタナではなく、4人になってからのForeignerCheap Trick的なポップさを伴ったギター・バンドで、しっかりした骨組みの楽曲がバラエティ豊かに並んでいるのだ。切々と歌われる「TV Moon」、Brian Geltner(ドラム)とDrew Santarisiero(ベース)というリズム隊の仕事っぷりに唸らされるグルーヴィな「You'll See」、劇的な展開でじわじわと盛り上がっていく「Stabbed」などなど実に楽しい。若々しいというか瑞々しいボーカルはネリー・フーパー君で、誰だってワイルドバンチなNellee Hooperかとハッとさせられるわけなんだが、綴り違いのNellie Hooperでもちろん別人。その後の音楽活動がよくわからないので、業界から足を洗っちゃったのかもしれない。残念な限りだ。すべての楽曲の作曲はギターのKenny Siegalが中心になってなされている。ブックレット中のアーティスト写真でも真ん中にいるので、実質、彼のバンドといってもいいところだろう。
本作は、ファンがつくって一応、公認取っているっぽいMySpaceで数曲試聴できるほか、彩音ではRascal Reporters関係でお馴染みのReverbnationに同じ人がアップしたと思しきスペースがあって、未発表曲4曲を含むデモ・テイクが7曲も聴けちゃうので、これ要チェックやで。あ、『Hunk』の全曲も続けて試聴できちゃったりするよ、わかりにくそうなので念のため書いとこ。

TFF的観点から注目したいのは、1996年という年は『RATKOS』ツアーの時期に当たるということ。良かれ悪しかれグランジ・ブーム以降という立ち位置で音づくりをしていた同朋という見方ができるのだ。やっぱり音楽的にTFFと似ているとは云い難いわけなんだが、同じ時代の音楽の香りが感じられる練り上げられたロックという点では近しいものがある。そして、結果的に『ELAHE』で一緒に仕事する理由みたいなものは朧げにでもきっと感じられるに違いない。

で、Hunk解散後の彼らのその後は次回に続くんだなこれが。『ELAHE』における彼らの仕事っぷりもそこで語ろうかと。

ちなみにCharltonは1曲だけ「The Rope」という曲をメンバーと共作し、なぜかClavinetを演奏している。演奏での存在感はあまりない。曲の方はバンド・イヤーズのCharltonらしいキャッチーさが感じられてなかなか良い。
ま、Charltonは次回ももちろんしぶとく登場するので乞うご期待なんだけどね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/01/15

Around TFF 12 『Russ Irwin』 Russ Irwin

直接的にはTFF作品に関わっていない人なんだが、Charlton Pettusがアルバムに参加しているってのもあるし、Curt Smithのソロ作に参加している人でもあるということで採り上げておきたい。Russ Irwin(ラス・アーウィン)である。

基本的にRuss Irwinはピアニスト兼ボーカリストとして活動している。知名度の高い仕事はAerosmithのツアー・メンバーとして1997年以降、キーボードを担当してきたこと。『A Little South of Sanity』をはじめ最近のライブ音源、ライブDVDにはまずだいたい登場している。ま、AerosmithってばボーカルVSギターのイザコザが再燃しちゃっている状態なので今後どうなるかはわからんがね。TFF的にはCurtの結成したMayfieldにアディショナル・メンバー的な立ち位置で参加。また、Clay Aikenの『A Thousand Different Ways』 には、TFF人脈のCharlton、Doug Pettyと共にプレーヤーとして名を連ねている。

Russ Irwin

Russ Irwin』 Russ Irwin
1991年のデビュー・アルバム。かつ現状唯一のソロ作である。アイドル的に売り出そうという腹があったのか『愛のプレゼント』というバッカじゃないの?という甘い邦題で日本盤(洋盤と激しくジャケ写が違うが収録曲はまったく同じ)も出ている。ただ、実際にちょいハスキーながらも甘い歌声の持ち主ではあるので、あながち大間違いとも云い切れない。本作の聴きどころは何といっても声の魅力だしね。何しろピアニスト/キーボーディストが肩書きの人なのに、ギターやホーンなんかのアレンジが強くて、どちらかというと演奏者としてよりも歌手としての力量に迫るような内容になっているのだ。プロデュースは大御所のPhil Ramoneなのに、やたら産業ロック的というかAOR的というか。ま、ギターのJeff Jacobsonはなかなか良い仕事をしているのだがな。Billy Joelの影響でこの道に入ったというだけあって、それっぽい感じもままあるのだけど、どの曲もいまひとつキャッチーなサビみたいなものがないので、どう逆立ちしても一般受けはしないんじゃないかと。何て云うんだろうもうひとつ垢抜けない感じ。オイラはけっこう好きなんだけどね、ダラダラした雰囲気。というわけでかどうかはわからんのだけど、気合の入った作品の割りにセールスが振るわなかったこともあって、セッション・ミュージシャンに転進。前述のような仕事っぷりになっていく。ただ1曲、「I Need You Now」というのだけは他の曲とは違うのだよ。これだけ曲も演奏も全盛期のTOTOみたいなんだ。華やかなピアノを中心に据えて、シャウト気味に歌う姿はアルバムの中で完全に異彩を放っている。地味目のロックがダメな人でも、この1曲はイケルはずだ。そんなわけで相変わらずTFFとはカスリもしない音楽性のミュージシャンなのだが、オススメなのである。ちなみにCharltonは5曲にバック・ボーカルで参加。4人コーラスのひとりみたいな仕事なので、あまり存在感はない。

参考サイト:russ irwin site

| | コメント (8) | トラックバック (0)

2010/01/04

Around TFF 11 Charlton Pettus関連作品3 After 2000

今回は、Charlton Pettusの今世紀に入ってから関わってきた作品を紹介していこう。
前回の期間をバンド・イヤーズと捉えるなら、今回の期間はアイドル・イヤーズと云えよう。アイドル歌手のプロデュース・ワークがめっさ増えて、そっちで知る人ぞ知る存在になっていってしまう。

For Nearby Stars

For Nearby Stars』 VPN
ジャケのせいでエレクトロニカみたいなのを想像しがちなんだが、2001年に発表されたAustinとPattyという双子のHughes兄妹を中心とした4人組バンド、VPNの2ndアルバム。バンド名はVery Pleasant Neighbor(とっても楽しい隣人)の略らしい。本作でのCharltonはプロデュースとバンドが出している音以外の様々な楽器演奏で全面参加。4人全員がボーカルも担当するということでハーモニーを生かしたアレンジがムーディでジェントルな独自の世界を形成している。例えるのが難しいわ。Charltonらしい深い音響空間はまだ鳴りを潜めているが、荒さがないのにノリの良さが活きている仕上がりが秀逸。楽曲も演奏もクオリティ高ー。これはもっと聴かれるべき名盤じゃなかろうかと。Charltonの音づくりに反応しちゃったファンにとっては今のところ最重要作品と云い切れる。

Metamorphosis

Metamorphosis』 Hilary Duff
女優Hilary Duffの音楽における出世作。2003年発表。Charltonの関与は1曲のみ。3曲目の「Workin' It Out」の作曲をCharlie Midnight、Marc Swerskyと連名で担当。プロデュースもSwerskyと共同で行っている。大ヒット・シングルの「So Yesterday」「Come Clean」というよくできたアイドル・ソングに続く3曲目なのだけど実にすんなりと聴けてしまう。サビが弱いというところは否めないが楽曲的には前述2曲よりアレンジも曲展開も面白い。そしてCharltonの音空間はかなり出来上がっている。Hilaryの歌声も若いのに表現力豊かで流石。全米チャート1位、370万枚売上は伊達じゃない。Buono!も一歩踏み込めばこういう世界にたどり着くはずなんだがなぁ。1曲こっきりなんだがCharltonの名声はそりゃそれなりに知れ渡ったということで。

Hilary Duff

Hilary Duff』 Hilary Duff
2004年作品(日本盤はCCCD)。Charltonの関与は1曲のみ。12曲目の「Cry」で前作とほぼ同じ布陣によるスタッフが揃った。ロック色が強まったアルバムなのだが、この曲はバラードでおとなしい。アーティストの性質上、ボーカルが前に出たアレンジになるのは仕方のないところだろうけど、バックの演奏に奥行きの広さがあるのはプロデュースの賜物に違いない。アルバムには演奏者クレジットがまったく無いのだけど、Charltonもかなり演奏していそう。後半のキーボード使いは彼らしくてニヤリとさせられた。Hilary自体は本作以降少しずつ失速し音楽的キャリアは振るわなくなっていくのだけど、結局のところアイドルの賞味期限は早いということだろうか。個人的にはもう一花咲かせてほしい気もする。

A Little More Personal (Raw)

A Little More Personal (Raw)
Lindsay Lohan

Hilary Duffにも似た立ち位置にいるアイドル歌手Lindsay Lohanのヒット・アルバム『Speak』に続く2nd。通称「生」。何だそれ? 2005年作品。Charltonは、女性SSWであるMichelle Lewisらとの共作曲「Beautiful Life (La Bella Vita)」の提供のみで、プロデュースや演奏は担当していない。アルバムのラストに収録されているこの曲は、現在放送中のTVドラマ「ザ・ヒルズ」のサントラにも収録されているそうな。ギター演奏をベースとしたアコースティック・バラードといった風情で、知っている耳で聴くとCharltonらしさはけっこう感じられる。演奏とプロデュースはアイドルものといえばこの人といった感じのGreg Wells。ちなみに2曲目の「Black Hole」では紹介済みのTFF人脈、Louise Goffinが作曲に関わっている。アルバム全体も色物っぽいジャケの割に中身はよくできていて、なかなか味なCheap TrickStevie Nicksのカバーなんかも聴ける意外なほどの好盤だったりするんだぜ。

Damaged Heart

Damaged Heart』 Jessarae
2009年3月に発表された14歳少年SSW、Jessaraeの5曲入りミニ・アルバム。Charltonの仕事としてはおそらく最新のもののひとつ。全曲のプロデュースとほとんどのバックアップ演奏を担当している。MySpaceで全曲フル試聴できる。聴けば一発でCharltonらしい音響空間が理解できることだろう。時に女の子っぽくも聴こえる歌声が瑞々しー。日本でデビューさせたら萌え萌えになる女子続出だろうなぁ。日本amazonはMP3のみ。米国ならCDある

なお、Charltonは現在、Austin Andersonというこれまた15歳という少年ボーカリストの作品をプロデュース中の模様。こちらは中性的な感じはなく、ああ、男の子アイドルだなぁという雰囲気である。

ちなみに前後編でお送りしたCDはどれもだいたい安値で入手可能だったりする。オイラが買ったときはもっと高かったんだがなぁ。SlukaはAmazon.co.jpのマーケットプレイスで1円~みたいな感じだし、Hilary Duffもブックオフ250円棚にチラホラ。Marry Me Janeも米国Amazonで安く買えるよ。あと中ノ森BANDの『Do the Rock』というアルバムに「New Year Party」という曲を共作ながら提供しているらしいんだが、聴けていなくて残念だ。せっかくニュー・イヤーになったばかりで絶好のタイミングだというのにな。ちなみに云っとくと、Buono!のバック・バンド、Dolcheのドラマーは元中ノ森BANDの人らしいね。あ、そんなところでつながった、みたいな。

TFF的な見地からまとめると、こういうお仕事をしている人がRolandとCurtをガッツリと支えているのだということを知っていただくことで、安心感を得ていただけるんじゃないかと。Curtとの付き合いは1995年辺りからなのでもう15年。再結成TFF以降ということで云ってもまぁだいたい10年くらいになるわけだしね。過去、TFF人脈でそんなパートナーシップを持っていたのはまさにRolandとCurtの当人たち同士だけなんじゃないかというくらいで。実に頼もしいサード・パーソンだと思っておりますよオイラは。

さて、実はこの後もCharlton Pettus関連作品が続くのだけど、違うTFF関連のミュージシャンの話が中心になるので、とりあえず幕引きということでな。
それ以外のまだ聴けていないCharlton Pettus関連作(けっこう数多くある)もフォローの必要性を感じたらまたあらためて紹介していきたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/01/02

Around TFF 10 Charlton Pettus関連作品2 Before 2000

ATFFってば元々は1エントリ1アルバムで紹介するスタイルで行こうかと思っていたのだけど、ムリヤリ引っ張ってもなぁというケースもあると思うんだ。ということで、今回と次回はCharlton Pettus関連作品を簡略化した感想で前後編に分けて一度にガーッと消化しちゃおうかと。ま、TFFファンで、ここまで追いかけようって思うのはぶっちゃけ世界中でも少ないと思うし。あと本音。そんなに語ることは、な・い・ん・だ……。

Neverland

Neverland』 Suzanne Ciani
1988年に発売された所謂ヒーリング系シンセサイザー奏者であるSuzanne Ciani(スザンヌ・チアーニ)の3rdアルバム。彼女がグラミー賞にノミネートされ、イージーリスニング・ファンだけでなく幅広い人気を得る足がかりになったと思しき作品だ。調べた限りCharlton最初期の参加作の模様。3曲に演奏とアレンジで参加しているが、まぁ、ぶっちゃけ彼らしさってのは欠片も感じられない。最終曲に若干ボーカルが入るが、ほとんど全編インスト。アルバムそのものはどの楽曲も聴きやすくって、好きな人にはたまらない世界だろう。オイラもたまにこういうの無性に聴きたくなる。でも、耳にはあまり残らない。

Emotional Battlefield

Emotional Battlefield』 Sluka
1989年の作品。日本のレコード会社・メルダックの中の人が一目惚れしたのか、80年代が永遠に続くというロック・ビジネス幻想から青田買いしたのか、日本で先行デビュー!のはずが日本だけでのデビューとなっちゃったChristopher Sluka率いるNYのバンド、スルカの1st。音楽バブルは終わっていた……。音もいわゆる産業ロックの香りが強い、キャッチーかつサビが耳に残りやすい感じのアレ。フロント・マンのChristopherを前面に押し出す編成だし音づくりになっているが、日本人の仕切りがあるせいか丁寧なプロデュースでまとまっているなぁという出来になっている。それが無難さやつまらなさにつながってしまっているキライもあるのだけどね。しかし、後にI, Synthesistの名義で活動することになるChris Ianuzzi(Suzanne Cianiの作品への参加もある)というキーボード奏者の演奏はなかなか印象的だ。パーマネント・メンバーのCharlton(ジャケ左上)はもちろんギターでアルバム全編にわたりガッツリ弾き倒している。ギター・ソロなんかもちょいちょいあるのだけど、無難なフレーズでまとめてんなぁというところで、腕が無かったのか制作陣の意向だったのかはよくわからん。全体にPhil Manzaneraチックなギターといった風だな。2曲の共作があるだけで、作曲にはあまり関わっていない。

アルバム・ライナーから引用:「チャールトンは母親がフラメンコ・ギターのプレイヤーだったこともあって、7歳の時から母親にギターを教わる。が、既に3歳の時から、クラシック・ピアノを習っており、10歳からはクラリネットを学び始め、この頃から自分のバンドを作って活動を開始し、高校、大学はフュージョン・バンドを組んで、ボストンのクラブでプレイしていた」。……そのフュージョン・バンドの音、聴いてみたいわ。

Fear Of Ordinary Life

Fear Of Ordinary Life』 Sluka
1990年の2ndアルバム。前作よりバンド・アンサンブルを意識した感があり、Charltonもすべて共作ながら13曲中7曲で作曲にも関わっている。ギターだけでなく、2ndキーボードやバック・ボーカルも担当するようになった。ただ、楽曲は総じて小粒というか地味な空気が流れているので好みが別れるところだろう。ぶっちゃけボーカルがもっと特徴的だったらいいのになぁと思う。ジャケット通りの端正とかお上品とかいうイメージから抜け切れない感じがあってね。惜しい。ラストのフュージョン色プンプンな「Soldier Of Sincerity」みたいなのをもっとやってくれれば面白かったかも。なお、この2作のみでCharltonが脱退した後もバンドは継続中。Slukaについては公式サイトがあるので詳しく知りたい向きはどうぞ。

Tick

Tick』 Marry Me Jane
1997年作品。前年に同名アルバムでデビューしたMarry Me Janeの2nd。女性ボーカリストAmanda Kravat率いる5人編成のバンドだ。Charltonはメンバーというわけではなく、Jay Healyと共にプロデュースを担当。その他、バンドと一緒に全曲のアレンジを行い、3曲で共作もしている。Amandaの歌声もバックの演奏もズバリSheryl Crowっぽい。もっと繊細な感じだけど。曲によってはケルティックな雰囲気もチラホラ。メリケンのくせに。なかなか佳曲が多いアルバムに仕上がっていて、これは自信をもってオススメできる作品だ。じわじわ盛り上がる「Faithless」とか好きだなぁ。後のCharltonらしい立体的な音響空間はまだ聴けないが、通底する音の広がりへのこだわりが散見されて、なかなか楽しめる。なお、バンドは現在も継続中。ちなみにタイトルは「tea eye see kay」という表記もあるので、『ティック』と読むわけではないらしい。

あれ? 意外と情報だけでも長くなっちまったなぁ。あらためて云うまでもないと思うのだけど、TFFらしさは皆無と云っていい。でも、それぞれ聴きどころのある作品にはなっていると思うので、機会があったら聴いてみてもいいんじゃないかな。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/01/01

Around TFF 9 Charlton Pettus関連作品1 「Learn to Play Guitar」 Gigolo Aunts

明けましておめでとう。あんまり進まなかったので今年はATFFもどんどん書こうかと。

で、需要があまりなさそうな気もするのだが、それでもオイラがやらねば誰がやる?という感じなのでCharlton Pettus君についてを3回にわたりお送りする。

そうは云っても、Charlton Pettusについては過去のエントリ(ココとかココ)でも触れていて、あらためて伝えることってそんなにはないのだけど、とにかく過去のTFFサポート・ギタリストの中で、もっとも楽曲の理解力と対応力の高い人なんじゃないかという点は特筆に価する。また、立体的というか非常に奥行きを感じさせる音響空間をつくり上げるプロデューサーとしての仕事がたいへん特徴的なんだ。彼が関わってきた作品を通じて、そういった彼らしさの片鱗が見えてくりゃいいなと。

まずはFred Eltringham君を紹介する都合によりこの作品からスタート。

Learn to Play Guitar

Learn to Play Guitar」 Gigolo Aunts
1997年発表の6曲入りEP。これがCharlton PettusとFred Eltringhamの接点となった作品だろう。Charltonは6曲目の「The Sun Will Rise Again」1曲のみプロデュースと演奏(オルガン)で参加。ちょっと気だるさのあるボーカルにパワーポップといった演奏の1~5曲目(バンドとDarron Burkeによるプロデュース)とは雰囲気がだいぶ違う。パワーポップ感の中に見え隠れするバンドならではのというか、独特な叙情性を引き出すために、出だしのとこ以外をアコースティックなアレンジでコーティングしたような、さりげない職人技が光る。実にCharltonらしい仕事だ。ギターの爪弾きを際立たせるためにオルガンを敢えて薄くバックに流すあたりの演出にも、その後の彼らしいプロデュースの妙味が見え隠れ。1曲とはいえ聴き逃すともったいない作品だ。TFFっぽさはほとんどないけどね。

ここでFred Eltringham君についてもおさらいしておこう。『ELAHE』やカートの『Halfway, Pleased』で叩いているドラマーだ。Gigolo Auntsには紹介したEPのちょっと前くらいから加入。ここでのCharlton Pettusとの出会いをきっかけにCurt Smithと出会い、TFFの録音にも参加することになったのだろう。Gigolo Auntsには、彼らが活動停止するアルバム『Pacific Ocean Blues』まで参加しており、一応、現在もメンバーということにはなっているらしい。その後、様々なアーティストのバック・ミュージシャンとして活動(この間にTFF仕事も行ったわけ)し、現在はJakob Dylan率いるThe Wallflowersのメンバーとして活躍している。また、並行して女性3人組カントリー・グループ、Dixie Chicksのツアー・ドラマーも担当している。
派手ではないが味のあるスティック裁きが魅力。The Wallflowersに加入せずにTFFツアーにも付き合っていたらどうだったかなぁ、それも観てみたかったなぁとも思うが、結果的にNick D'Virgilioで正解だったのかなとも。うーむ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)